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エルビウム

元素記号:Er 英語名:Erbium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

68

167.26

1529

2863

0.2508

 エルビウムは柔らかい銀色の金属です。地殻には3.8ppm(0.00038%)ほど存在しています。スウェーデンのモサンダーはガドリン石イットリウムが発見された鉱物)の研究を行い、1843年、2種類の未知の元素を発見しました。モサンダーは、ひとつにエルビウムと、もうひとつにはテルビウムと名付けました。両元素名とも、ガドリン石が発見されたイッテルビー村(ストックホルムの東南東30Kmにある)の地名に因んでいます。この時に分離されたエルビウムは純粋なものではなく、その後の研究で別の希土類元素が6種類も含まれていたことが判明しました(参照:ジスプロシウム)。
 エルビウムはゼノタイムから得られています。エルビウムの最も重要な利用物は光ファイバーです。エルビウムを含ませた光ファイバー(EDF:Erbiumu Doped Fiber)には、伝送に適した波長を持つ光の強度を増幅させる特性(コラム参照)があり、インターネット社会を支えています。

Y2FeBe2(SiO4)2O2

YPO4

ガドリン石

ゼノタイム

ガドリン石

ゼノタイム

愛媛県 北条市 高縄山

Ibitiara, Bahia, Brazil

コラム「光ファイバーとエルビウム」
 光ファイバーを利用した光通信は、高速通信において不可欠な技術です。光ファイバーは主に石英ガラスで作られています。純粋な石英(SiO2)は最も透明度の高い物質のひとつであり、光ファイバーに最適な物質です。石英ガラスの場合、波長(1.55 マイクロメートル)(注:1 マイクロメートル = 0.001 ミリメートル)が光を利用すると最も損失が少なくなります。しかし、光がファイバー中を 20 キロメートル進むと、光の強度は半分になってしまいます。100 キロだと、100分の1に弱まります。そのため、光の強度を増幅させる仕組みが必要になります。従来は、光信号を電気信号へ変換し、その電気信号の強度を増幅し、再び、光信号へ戻すことが行われていました。この方法では、電気信号に伴うノイズも増幅させてしまいます。光の強度のみを増幅するために、エルビウムを含んだ光ファイバー(EDF)を利用した光増幅装置が開発され、10000倍以上もの増幅が可能になっています。ここでは、光の増幅の仕組みを紹介しましょう。

エルビウムを含ませた光ファイバー(EDF)

エルビウムのエネルギー状態を上げるためのレーザー光線

入射する
光信号
増幅された
光信号
:エルビウム(3価のイオン)

 エルビウムを含ませた光ファイバーは、上の図のように、通常の光ファイバーと接続して使用します。エルビウム(3価のイオン)へ、レーザー光(波長は、1.48 マイクロメートル)を照射すると、エルビウムのエネルギー状態のレベルが上がります。このエネルギー状態から元の状態へ戻る時、エルビウムからは、1.55 マイクロメートルの波長を持つ光が放出されます。いま、レーザー光によってエネルギー状態のレベルが上がったエルビウムへ、別の光(波長は、1.55 マイクロメートル)を当ててやります。すると、エルビウムからは、強力な光(波長は、1.55 マイクロメートル)が発生します。この様に、エネルギー状態の変化で発生する光と同じ波長の光を当てることによって、当てた光と同じ波長を持つ光が強力に放出される現象を、誘導放出と呼びます。エルビウムの場合、1.55 マイクロメートルの波長の光によって誘導放出が発生しますが、この波長の光は、同時に、石英ガラスにとって最も損失が少ない光です。よって、エルビウムを含ませた光ファイバーを使用すれば、光通信に適した波長の光をそのまま増幅することが可能になります。

隣接元素
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ホルミウム エルビウム ツリウム
フェルミウム

  

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