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ネオジム

元素記号:Nd 英語名:Neodymium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

60

144.24

1021

3068

0.8279

 ネオジムは銀白色の金属です。地殻には38ppm(0.0038%)ほど存在します。1885年、オーストリアのウェルスバッハによって、プラセオジムと同時に発見されました(参照:プラセオジム)。元素名はギリシャ語のneos(新しいの意)とdidymos(双子の意)に因んで、ネオジジミウムと名付けられましたが、現在ではネオジムが使われています。
 ネオジムの鉱石はイオン吸着型鉱です。この鉱石は水による天然の濃縮過程によって造られました。元々存在していた別の古い鉱石が風化され、その鉱石に含まれていた希土類元素が水に溶けてイオン化し、そのイオンが粘土に吸着されて集まったのが、イオン吸着型鉱です。この鉱石には30%の酸化ネオジム(Nd2O3)が含まれています。
 ネオジムの重要な利用品は、ネオジム磁石とレーザー光線の発生源です。ネオジム磁石は通常の磁石(酸化鉄を利用したフェライト磁石)の10倍以上のパワーを持っており、ディスクドライブやビデオデッキなどで使用されている超小型のモーターの部品として、不可欠な強力な磁石です。ネオジムを用いたYAGレーザー{イットリウム(Y)とアルミニウム(Al)と酸素から構成されるガーネット構造の結晶に、ネオジムを混ぜたものを使用するレーザー}は、長寿命で、高効率という優れた特性を持っており、半導体の製造や手術で使うメスなど、広い分野で利用されています。ネオジムを混ぜたガラスを使用するレーザーは大出力を得ることに適しており、レーザー核融合の実験装置に利用されています。
 ネオジムの同位体のうち、ネオジム143(陽子:60個、中性子:83個)には、サマリウム147(陽子:62個、中性子:85個)がα線を出して生成されたネオジム143が、時間の経過と共に追加されています。追加されるペースは一定であることから、岩石などの年代を求めることができます(サマリウム-ネオジム法)。また、地殻とマントルの進化の様子を調べる指標になっています(コラム参照)。

コラム「ネオジム同位体比の変化と地殻・マントルの進化」
 ネオジム143には、サマリウム147がα線を放出することによって生成する成分が追加されています。よって、ネオジム143とネオジム144のは、時間の経過と共に、大きくなります。この様子を表したのが、上のグラフです。横軸は時間を表しており、0点は地球及び太陽系が誕生した時(45.5億年前)です。縦軸は、ネオジム143とネオジム144の比を表しています。図中のA点は、太陽系及び地球が誕生した時のネオジム143とネオジム144の比です。この点は隕石の分析から求められています(コンドライトとエコンドライトでも差がない)。つぎに、隕石中のネオジムとサマリウムの存在比を分析したところ、こちらも同じ様な値となっています。よって、地球も、隕石と同じ存在比であると推定することができます。B点は、ネオジム143とネオジム144の存在比と、ネオジムとサマリウムの存在比を使って計算で求めた、現在の地球及び太陽系全体の平均値です。
 マントルが部分的に溶けて生成したマグマが固まって、地球の地殻は形成され続けています。マントルが溶ける際、ネオジムとサマリウムは多少異なった振る舞いをします。溶けた部分(マグマ)へ、ネオジムの方が多く移動します(参考:ネオジムのイオンの方が少し大きいため)。よって、溶けなかった部分にはサマリウムの方が多く残ることになります。その結果、地殻(マントルが溶けてできたマグマが固まった部分)では、ネオジムが多くなる、つまり、サマリウムの影響が少なくなるため、ネオジム143とネオジム144の比は、溶け残った部分よりも低くなります。上のグラフの大陸地殻を見ていただくと、他の部分(例えば、B点)よりも、低くなっています。
 次に、地殻になったマグマをはき出した部分を考えてみましょう。この部分の様子は、中央海嶺玄武岩を分析することでわかります。上のグラフで、中央海嶺玄武岩は、他の部分よりも、ネオジム143とネオジム144の比が大きくなっており、今までの話と調和が取れています。
 海洋島玄武岩とは、ハワイやアイスランドなどの島々を構成している岩石です。海洋島玄武岩を構成している元素は、中央海嶺玄武岩の元素よりも、深い領域に存在していたと考えられています。ネオジム143とネオジム144の比は、B点をはさむ様な値となっています。マントルへ沈む込んでいった地殻も影響していると考えられています。
 ネオジム143とネオジム144の比の分析が本格的に行われるようになったのは1980年になってからです。1980年代のデータを見ると、27億年前よりも古い岩石は地球の平均値のような値でした(A点とB点を結ぶ実線上にデータが乗っていました)。そして、27億年よりも新しい岩石で、バラツキが現れていました(実線に乗らないデータがある)。このことから、27億年前(C点)から、ネオジムとサマリウムの存在比が異なる部分(赤の破線と緑の破線)が誕生し、この出来事は大陸の誕生であると解釈されていました。実際、27億年前(C点)から大陸の面積は大きくなり始めています。
 しかし、1990年代になると、データが増え、25億年よりも古い岩石でも、データ(ダイダイ色の部分)がばらつくことがわかりました。これを説明するには、地球が誕生して2億年以内に、ネオジムとサマリウムの存在比を変える出来事が必要になります。しかし、データのばらつきは岩石の変成によるものとする意見もあり、まだ、学説の一致は得られていません。

隣接元素
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プラセオジム ネオジム プロメチウム
ウラン

  

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