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チタン

元素記号:Ti 英語名:Titanium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

22

47.88

1725

3287

2400

 チタンは地殻で9番目に多い元素で、平均で約0.6%存在しています。1791年、イギリスのグレゴール牧師は近所の川の砂の中に、黒い砂粒(磁鉄鉱)の他に、赤褐色の粒が混ざっていることを発見しました。彼は赤褐色の粒の化学特性を調べ、未知の鉱物であることを確認し、メナカナイトと名付けました{現在名はイルメナイト(和名:チタン鉄鉱、FeTiO3)です。}。初めて、チタンを新元素として確認したのは、ドイツのクラプロートでした。1794年に、鉱物標本{ルチル(TiO2)説とイルメナイト説がある}を分析し、新しい金属元素を発見。ギリシャ神話に出てくる地球の最初の子供Titansにちなんで、チタンと名付けました。
 チタンは以前はルチル(TiO2)から精製されていましたが、ルチルの産出量が減ってきたため、現在ではイルメナイト(FeTiO3)から酸化鉄を取り除いて生産した二酸化チタンが原料として多く使用されています。チタンと酸素はとても強く結びついており、分離する方法(コラム参照)が見つかったのは、チタン発見から100年以上たった1910年でした。工業用に大量生産が可能になったのは戦後(1948年)です。
 チタンは、軽くて、丈夫な金属です。溶ける温度が主要な金属の中で最も高い1668℃。錆にも強く、海水中での耐食性は白金に次ぐ強さです。この様に優れた特性を持つ金属であったため、冷戦時代には戦闘機や潜水艦に大量に使用されていました。例えば、F15戦闘機には5トンものチタンが使用されています。民間で使用できるようになったのは、チタンの生産性が向上してからです。高温と衝撃が加わるジェットエンジンの本体や発電機のタービン、海水にさらされる構造物(瀬戸大橋、東京湾横断道路など)、軽さと強度が要求される屋根(ヤフードームの屋根など)はチタンの特性を生かした利用例です。最近は、身近なものにも多く(ゴルフクラブのヘッド、カメラケースなど)使用されているほか、生物の体と反応しないことから眼鏡のフレームや人工関節の素材にも利用されています。

FeTiO3

TiO2

イルメナイト(チタン鉄鉱)
Limple Mountain, South Carolina, U.S.A.
ルチル
Novo Horizonte, Bahia, Brazil

コラム「チタンの精製」

 二酸化チタンからチタンを精製するには、2段階の処理が必要です。まず、炭素と塩素ガスを加えて、900℃に加熱し、四塩化チタン(TiCl4)を発生させます。

TiO2 + C + 2Cl2 → TiCl4 + CO2

次に、四塩化チタンとマグネシウムを反応させて、チタンを精製します。

TiCl4 + 2Mg → Ti + 2MgCl2

この処理を実施する際、チタンが酸素や窒素と化合することを防がなければなりません。そのため、化学反応性がないアルゴンガスの中で、処理が行われます。生成したチタンはスポンジ状の形態をしているので、スポンジチタンと呼ばれています。

おまけ「顔料と煙幕」

 人工的に生成された二酸化チタンは白色をしており、白色顔料のひとつです。チタンホワイトとして、絵の具やペンキに用いられています。また、先ほど出てきた四塩化チタンを水と反応させると、二酸化チタンの微粒子からなる白い煙が発生します。

TiCl4 + 2H2O → TiO2 + 4HCl

この反応を軍事利用したのが煙幕です。航空ショーや飛行機による宣伝で行われるスカイライティングも、この反応を利用しています。

隣接元素
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スカンジウム チタン バナジウム
ジルコニウム

  

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