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酸素

元素記号:O 英語名:Oxygen

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

8

15.9994

-218.4

-183

2.38x107

 酸素の分離が成功したのは18世紀後半である。当時は、可燃物には燃える素(フロギストンと呼ばれていた)が含まれているので、燃えるのだと考えられていた。そのため、酸素の分離に成功した化学者は、新元素を発見したことに気づくことができなかった。それから7年後、酸素の分離法を教えてもらったフランスの化学者ラボアジェが、酸素の存在を確認し、フロギストン説を覆した。そして、ギリシャ語のoxys(酸味のある)+gennao(生ずる)から、酸素と名付けた。
 酸素は宇宙では水素、ヘリウムに次いで3番目に多い元素である。地殻を構成する元素では最も多い元素で、地殻の約47%が酸素原子で構成されている。そのため、酸素を含んでいる鉱物は非常に多く、典型的な鉱物を挙げることは難しい。コラムでは、有孔虫の化石の酸素の分析から、過去の気候を復元する研究を紹介しよう。

星の砂(有孔虫の殻)

酸素同位体による過去の気候の復元
 酸素原子に含まれている陽子の数はどの酸素原子でも8個である。しかし、中性子の数は8個のもの(8+8=16なので、酸素16と呼ばれる)の他に、10個のもの(酸素18)が存在している。つまり、重さが異なった酸素原子が存在しているのである。酸素16と酸素18の存在比を利用して過去の気候が推定する研究が行われており、過去70万年の間に9回の氷河期があったと考えられている。どのようにして推定されたのかを解説しよう。
 水は1つの酸素原子と2つの水素原子で構成されている。酸素原子に重さが異なるものが存在するので、水にも酸素16を持つもの(軽い水)と酸素18を持つ(重い水)が存在する。両者は同じ水であるが、軽い水の方が蒸発しやすい。これを納得していただくためには、まず、理科の授業で出てきた、水蒸気と液体の水を表したモデル図を思い出して欲しい。水の分子が自由に動き出せるようになることが、水の蒸発であると理解したことを思い出そう。軽いものの方が動きやすいので、軽い水の方が蒸発しやすいと理解できる。また、蒸発しなかった水には、重い水の方が残りやすいことも理解していただけると思う。
 次に氷河の話に移る。氷河は降り積もった雪が固まったものであるが、雪は海水から蒸発した水が固体になったものである。蒸発した水には軽い水が多いので、氷河を構成する水には軽い水の方が多いことになる。いま、地球の気温が下がった場合を考える。氷河の量が増加するので、より多くの軽い水が海水から取り除かれることになる。海水には重い水が取り残されている割合が増えることになる。つまり、地球の気温が下がれば、海水中に重い水が存在する割合が増えることになる。逆に、地球の気温が上がった場合を考える。軽い水を多く含んだ氷河が溶けて、海に流れ込むことになる。海水に軽い水が多く供給されることになる。つまり、地球の気温が上がれば、海水中の重い水が存在する割合が減ることになる。
 今までの話をまとめると、軽い水と重い水の存在割合、つまり、酸素16と酸素18が海水に存在する割合が、地球の気温の目安になることが理解できたであろう。
 次に、分析する試料を紹介する。酸素の分析には有孔虫の化石を利用する。有孔虫は炭酸カルシウム(CaCO3)を含む殻を持っている原生動物の一種で、現代も生存している生物である。(有孔虫の殻が海岸に集まったものが星の砂である。)有孔虫が炭酸カルシウム(CaCO3)を含む殻を造るとき、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)を構成する酸素(O)が利用される。つまり、有孔虫の殻には海水の酸素の情報が含まれていることになる。
 以上の説明より、有孔虫の化石の酸素を分析すれば、有孔虫が生きていた時代の気候が推定できることが理解していただけたと思う。なお、化石の年代は、炭素14法(参照:炭素)や、パラジウム231/トリウム230法で、決定される。

隣接元素
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窒素 酸素 フッ素
硫黄

  

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