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レニウム

元素記号:Re 英語名:Rhenium

原子番号

原子量

融点(℃)

沸点(℃)

宇宙存在度

75

186.207

3180

5627

0.0517

 レニウムは銀白色の金属です。地殻には0.0004ppm(0.00000004%)しか含まれていません。ドイツのノダックとタッケ(後のノダック夫人)とベルクは、1925年、コルンブ石から別の元素を丹念に分離した残りの成分(量は元の10万分の1に減っていました)をX線分析し、75番元素となる新元素を発見しました。元素名レニウムはドイツ国内を流れるライン川のラテン語名 Rhenus に因んでいます。75番元素は元素周期表ではマンガン(Mn)の2段下に位置しています。ノダック達は、マンガンを含んでいる鉱物には75番元素も含まれていると考えて、コルンブ石を試料に選び、レニウムを発見することができました。
 レニウムを主成分とする鉱物は極めて希(コラム参照)で、長年、未発見でした。レニウムは輝水鉛鉱(モリブデンの鉱石)から副産物として回収されています。レニウムの用途は限られており、元素の分析機器の部品(質量分析器のフィラメント)や、高温測定用の温度計の部品(熱電対)に使用されている他、摩擦の多い部分に使用する合金の強度を増すために、添加されています。レニウム187(陽子75個、中性子112個)は、420億年で半減するペースで、オスミウム187(陽子76個、中性子111個)へと変化します。この性質を利用して、年代を求めること(レニウム-オスミウム法)が可能です。両元素とも金属元素であり、鉄や硫黄の多い鉱物に濃縮しているため、レニウム-オスミウム法は鉄隕石や硫化鉱物などの年代測定に利用されています。

(Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6 MoS2
コルンブ石
コルンブ石 輝水鉛鉱
Paraiso mine, San Ramon,
Santa Cruz, Bolivia
岐阜県 大野郡 白川村 平瀬鉱山

ReS2
レニウム鉱
レニウム鉱
千島列島 択捉島 モヨロ火山

コラム「レニウムと日本のすれ違い」
 レニウムと日本の科学界には、不運なすれ違いが生じています。それも、1回ではなく、2回も、生じています。レニウムと日本の不幸な歴史を紹介しましょう。
 一つは、レニウムの発見に関わるものです。1906年、ロンドンへ留学中の小川正孝(後の東北帝国大学総長)は43番元素を発見したと発表し、ニッポニウム(今ではテクネチウムと呼ばれています。)と名付けました。しかし、別の科学者による再確認ができなかったため、小川の研究は間違いだとされ、ニッポニウムの名は消えました。その後、小川の研究内容の調査が行われ、計算ミスが見つかりました。その調査によると、43番元素ではなく、75番元素(つまり、レニウム)を小川は発見していたことが判明しました。もし、計算ミスがなければ、75番元素は日本人が発見した元素となり(ノダック達よりも19年も発見が早い)、レニウムではなくニッポニウムと呼ばれていたでしょう。
 もう一つのすれ違いは、レニウムの硫化鉱物の発見です。長い間、レニウムの鉱物は未発見でした。ロシアの火山学者が、1991年に、千島列島の択捉島にあるモヨロ火山の火口で、黒色の輝く鉱物を採取し、レニウムと硫黄で構成された未知の鉱物(ReS2)であることが判明しています。択捉島は日本の領土であり、日本の鉱物学者は複雑な心境です。なお、この鉱物には正式な名称がありません。発見者が鉱物委員会に申請を行わずに、別の科学雑誌で研究成果を発表をしたのが原因です。

隣接元素
テクネチウム
タングステン レニウム オスミウム
ボーリウム

  

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